FC2ブログ

ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
2018/08≪  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  ≫ 2018/10

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 ずっとあなたが・・・ 7

 時は、11月――。
 その少年を、わたしは心の底から見限ったのであった。
            ◇
 母親に目標校の受験を制止され、すっかり悄気てしまって数か月が過ぎた。
 授業にこそ出てくるものの、ずっと拗ねており結局12月を過ぎても、話は聞かない、指示に従わない、時間が来ても席を退かない、自習時間はずっと携帯機器をイジっているなどの困った態度をとり続けていた。
「教室1デキる子が、今や教室1の困った子になってしまった」
 現場監督の思惑は、小6生の1年間で公立中高一貫校向けのテキストが4冊終わる算段、だったようだ。
            ◇
 彼が知識を詰め始めたのは小4生の頃――ちょうど、この現場監督が赴任してきたときからである。わたしにべったりの彼を見て現場監督は、中学受験生向けのテキストを先んじて購入させ、自習の日を決めさせたのである。こうして自習に来ることになるのだが、それで自力でテキストを進め、わからないところは質問し、解けなかった問題は解き直しをして――勉強という作業ができる子供は、高校生を含めてもそうはいないのだ。少なくとも10年のキャリアを持つこの現場監督が見て来た中でも、彼の自習のセンスはズバ抜けているという。「独力で塾に来て完成度の高い自習」をやってのけた小学生は彼を含めても2人しか見たことが無いという。いわく「100人に1人の逸材」だそうな。知識への執着心が強く、ゲームをやる要領でどんどん知識を身につけていったのだ。
 小4生から小5生の終わる頃まで――母親に志望校受験を制止されるまでの間を、彼の高度成長期といえるだろう。
 わたし1人なら、彼がこれほどまで実力を高めることは無かった。
 また、わたしがいなければ、これほどまで現場監督が期待するようなデキになることも無かったであろう。
 彼は甘える場所があるから、「ピシッとやる場所」をつくることができたのである。
            ◇
 時は、11月。
 模試の成績が落ち始めて3か月が経っていた。それでも偏差値は、60の真ん中で止まりを見せていた。「知識を詰め込んだ」ということは、それだけで免罪符になるらしい。
 国語の答案を見ると、「40字以内で~」などの記述問題は、すべて空白である。小6生の最初の模試のときまでは、必ず何かしら書いていた。もう今はやる気が無く、幼い彼だからこそ考える気も起きず、乗らない気分で考えてもまったく解らないようだ。
 困ったのは、この点なのである。
 今までの説明で解っていたものが、解らなくなっていった。やる気も好奇心も無くなり、「勉強しろ」と強制されるようになって嫌気が差していった結果、考える気も無くなってしまったのだと、わたしは見ている。頭は非常に良いその代わりに、性格的には非常に幼いのだ。精神的なものの構造はひどく単調なのだ。
 例えば物凄く怒っても、オモシロイモノを見かけるとすぐに機嫌が直ってしまう。実に簡単に機嫌が大きく変わる。赤ちゃんを始め、幼稚園生くらいの子供を髣髴とさせるような場面が、多いのだ。
「じれったくて、肚が立つんだよ。なんでアレでわかんねーんだよ?」
 現場監督は生徒がいないときに、声を荒げた。彼の授業をもってみたところ、物分かりが悪くて、全然授業にならなかったらしい。一生懸命考えているが鈍いし、全然冴えない。歴戦の塾講師である現場監督の「偏差値70をキープできた子」のステレオタイプに、まったくそぐわない子供だったのだ。
 調子が良ければ、ちょっとヒントを与えただけでもう勝手にどんどん進めて行ってしまえるだけのチカラを持っていることは、紛れも無い事実なのだ。但し、気が乗らなければ、本当に「ただの子供」になってしまう。それも、12歳(小6生)ではなく10歳程度の幼児である。
            ◇
 国語は偏差値68をうろうろしている。
 算数の偏差値が、伸び悩んだ。55程度になっている。
 社会の偏差値は70を超えている。これのみ教室中で1、2位を争う実力で変わらない。
 理科がひどく落ちた。偏差値は60後半あったものが60を割り続けている。
 考えようとしなくなったから、
 小手先だけでパパパッとやろうとするから、
 論理能力で解法を追いかける必要のあるものが、極端に落ちて行った。
 尚、今年は2番手の中学受験生が、いた。彼女は小5生時代は偏差値50だった。彼との差は20も開きがあった。
 彼女――この連載の次の対象「少女モナリザ」――は、わたしの担当ではなかったが、担当者が休みの際に、代打で受け持ったことがあって、その落ち着いた佇まいと物言いに、驚かされた。
「彼女は、彼を脅かす存在になりますよ」
 その代理の授業の後に、現場監督とその右腕に喋ったところ、笑われてしまった。
 現場監督の経験からしてみれば、小学生の脳の偏差値20の差は、たった1年で埋められるわけがないと言わんばかりだった。 もちろん、現場監督はこのときも小6生の間の彼の成長の期待値を計算した結果だったのだろう。
 だが、わたしの予言はハズれなかった。
 少女モナリザ――。
 彼女は、国語の偏差値が65。苦手な算数の偏差値が55に上がる。社会の偏差値はそれでも60弱だったが、理科で58になっていた。私立校向けの模試では依然として彼がリードしていたものの、かなり差を縮めた。
 しかし。11月と12月の公立中高一貫校用の模試の結果は、彼の成績を大きく上回ってしまったのである。
            ◇
 解説。
 中学受験でも近頃は
 ・ 公立校&国立校
 ・ 私立校
の2種類に分かれている。元来の中学受験では「私立中学」が殆どであり、私立校の合格者は中学高校の6年間を過ごすのが、相変わらずメジャーである。但し、学費は公立校や国立校の比ではない。
 国立校とは、国立大学の教育学部の附属というカタチである。つまり、教育学の実験農場である。東京大学附属の中学校などでは「双子限定」などの条件がかかるところもあるという。中学高校の一貫校もあるものの、我らが県の国立中学校は併設高校が無く、中学受験をやっても、高校受験をせねばならないことになる。学費は義務教育と大差は無い。
 公立校――県や市が運営する学校である。中学受験をせずに地元の中学校に進学する場合は、大抵「市立」であろう。なんといっても、「公立中高一貫校」の登場である。公立校であって安い学費でありながら、私立校のような中高6年の計画性一貫教育を受けられることが、近年では話題を集めている。当然ながら、競争率はべらぼうに高い。試験問題も私立校の型とは、まったく異なる形式なのだ。「試験」ではなく「適性検査」と表示をしている。だからこそ、公立校受験であれば、それにマッチした対策が必要になる。
 塾会社各社は、公立中高一貫校の合格をどうやったら出せるか、必死になっている。
 公立校志願者とは安い学費が狙いだから、通塾させてもあまり高い授業料を出したがらない傾向があり、対策講座を開設するにしても制限が多くかかってしまうらしい。試験問題は、私立中学のような「見覚えのあるオーソドックスな問題」ではなく、必ず初見問題になるように、毎度ながら独特のものを出してくる。それも長大な文章で状況を説き、その条件に合った回答をさせることを狙っている。だから、同じ頭が良いでも、「知識」ではなく、「柔軟な対応」ができるものが、勝ちやすいと思う。作文による主張や感性などもチェックされるので、状況対応力は必要なセンスであろう。
            ◇
 わたしは彼を、見限った。
 どんなに世話を焼いてあげても、もうこれ以上の成長は望めないことを悟ったからだ。成績がこれ以下にならないことがわかった以上、わたしがチカラを注ぐ対象は、他に移すべきだと考えたからだ。
 これからは、彼の「甘え」による授業妨害をどう抑えていくかが、彼女――モナリザを志望校合格に近づけることになっていくのである。
 それから、あの歯を食いしばって上げる奇声………
「ぶぶむううぅぅぅ――ぅぅぅ!! ぶぶむううぅぅ――ぅぅぅ!!」
を頻繁に聞くようになるのである。
          ◇◇◇
 次回の更新は、23日を予定しています。
            ◇
 ライトノベル最大のコンテストは、4月10日。それに間に合わせるべく動いたが、逆算をすると、今年の応募はダメっぽい。
 今はしかも、春期講習の時間になってしまっている。
 とはいえ、製作活動に於いて、一昨日までの4日間は昔のように1日に数時間も割くことができた。計画は見直すことになってしまったものの、その計画(プロット)がダメかどうかが、実にハッキリ判断できる基準を、新しく考えついた。
 己の描こうとする物語に、何が足りないのかは、解る。人と関わってこなかったから、カタルシスや切所を描くのが、ヘタクソなのだ。この点は、問題ではない。最大の問題は、「物語をつくる」ことだ。物語を始めて、状況を流して、結末をつける。この一連のカタチに、認識もセンスも無さ過ぎることだ。物語が物語として帰結していない。カタチを為さないのだ。
 それもこれも「目的意識」というものをもったことが無かったからだ。なんとなくやってこられてしまったから。こんなところで、躓くとは……。
 だが、弱点が具体的に解ってしまえば、回復できるのが、ヒトというものの強みであろう。
 3月中にはなんとか、創作物のプロットを仕上げて、来年度には創作活動を再開したいものである。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


トラックバック

トラックバックURLはこちら
→ http://ddcafe080806.blog105.fc2.com/tb.php/1257-2e7c2791
FC2ブログユーザー用
この記事にトラックバックする。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。