FC2ブログ

ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
2018/08≪  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  ≫ 2018/10

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 ずっとあなたが・・・ 5

 母親に目標校の受験を制止されたことに、同情と憤慨を感じざるを得なかった。
 すっかりやる気を失くして、抜け殻のようになっている彼に対して、指導をマトモに聞いてもらえないわたしができることは、1つしかなかった。
 激励することだ。
 目標が失われていないことを、力説する。或いは、別の目標を示す。
 ――可愛がっている息子が、反対を押し切るだけの意志を見せれば、受験可能になるかもしれない。だから、もしものときのために、偏差値をキープしておくこと。
 ――もし、君が目標校の受験を断念せざるを得なかったとしても、将来の君の子供が同じような境遇にならないためにも、君には君の代で為すべき使命がある。
 以上のような内容を、力説した。
 なるほど、そのときだけはいつも通りに動くようになった。
 だが、翌日から元に戻っていた。それ以降、もう同じ説得は通用しなかった。
            ◇
 その後のことだった。確か、秋頃だったかと思う。
 彼の母親が、わたしを批判するようなことを口にしていたらしいことを、わたしが知った。どういった経緯で知ったかは、覚えていない。現場監督の保護者面談の後に、現場監督が事務員と喋っていたのを傍聞きしたのか、それとも彼の様子から感付いたのかは、もう忘れてしまった。
 それで、またわたしはいきり立つ。
 そもそも、この母親は自分だけが正しいと思っているようなタイプのオバサンである。家族を持っている壮年の女性というものは、どういうわけか、妙な自信をもっているような気がするが、カカア天下の彼の家庭環境を考えてみれば、随分と納得のいく言動が多かった。
「息子が先生を好きみたいだから、続けさせます」
というような理由で塾を継続する辺りも、自分は信用していませんといっているようなものである。わたしは無償で休日に勉強会を開いてきたことは数知れない。それでたまたま遅刻したことがあったのだが、
「休日に勉強を見てくれるのはありがたいんですが、」
と、クレームを言ってきたのも、この人だけだ。入会した直後から、この母親はクレームをつけてきたのも、わたしは覚えている。確か、報告書の表記に誤字があったことで、その講師に担当させないように注文をつけてきた。この人は、わたしへの息子の懐き具合を見ても、それを評価することは1度も無かった。文句だけは口にする。息子を塾にやった頃から、「慶應を受けられるほど、塾が成長させること」をまったく考えてすらいなかったことが解るから、不愉快なことこの上無い。
            ◇
 わたしに子供が懐くことについて、記しておこうと思う。
 わたしは、子供に対して猫をかぶっていたり、おべっかをつかったり、といったご機嫌をとるだけのような行為は、1度だってやっていない。ただ、子供にもわかるように、話をするだけだ。それも、テキストの知識を語っているわけではない。関連した知識、経験から言えること、日常で知識を使うこと、人としての振る舞いかた、などなど教訓めいた話を根拠付きで話しているに過ぎない。同い歳の人間でさえ、キチンと最後まで聴くことが難しいような、長大な話だって普通にする。
 その結果として、ついてくる子供は、わたしを指名して信用するようになったに過ぎない。これは、わたしの術ともいえるかもしれない。ついてきた子供の殆どが、優秀な成績を残しているからだ。授業として計画通りに知識を教えることは、多くない。それどころか、雑談で授業時間を潰すこともよくやったものだが、体験入塾を始め、塾が失いたくないような顧客(生徒)が、わたしの手許に集結した。それも、究極の信用度がある状態で、である。
 単なる「子供へのご機嫌取り」では、賢い子供たちは信用してついてくることはないのである。そこのところを、この母親は恐らく解っていない。
            ◇
 わたしが、怒る。荒れる。
 批判者に対して、反撃の意見を口走るようになる。その母親と顔を合わすことは無いが、子供がいようが現場監督がいようが、機会があれば、雑談の類とおなじように口走る。似たような批判をする者が居合わせたり、この母親と同じような傾向のある人間が来たりしたときは、大変だったに違いない。そういった相手に対して、目の前でハッキリ「バカ」というようなことが普通に起こる。
 意外なことに、最もビビッていたのは、彼だった。彼を攻撃していないし、いくら非難めいたことを口にしていても、怒り音を立てているわけではなかった。
 英語で怒っている状態を「マッド」ということがある。これは「狂っている」という意味だが、その通りわたしは狂ったようなくらいに怒っていた。
 それはもちろん、彼の母親の態度だけが原因ではなかった――。
 わたしはもうこの時点では、彼に対しても、呆れ果てていたのである。
          ◇◇◇
 次回は、3月15日を予定しています。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


トラックバック

トラックバックURLはこちら
→ http://ddcafe080806.blog105.fc2.com/tb.php/1255-4d48f34f
FC2ブログユーザー用
この記事にトラックバックする。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。