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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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 騎士マルタ ⑬

 試験対策は、この程度しか出来なかったわけである。公立一貫校の過去問題から算数系の問題を引っ張ってきて練習させようとも考えたが、類題として似ているとはまったく言えず、数も多くない上に、引用するには手間ばかりかかり能率は上がらなかったのだ。
            ◇
 12月が終わり、冬期休暇が終わると、モル坊のお母上が質問をしてきた。
 このページに以前記事として張り出したかもしれないが、
「1月の中旬以降は、学校を休んで受験勉強をさせたいと思う。小学校を休ませるべきか、考えを聞かせてください」
と、手紙をもらった。逡巡したが、教室の大半の中学受験生がそうなった。
 モル坊も呼び、勉強会を開催することにした。
 尚、この勉強会には有志が参加してきた。直接の教え子でない者が2人も来たことは感慨深い。
            ◇
 いつも通りの練習しかできないまま、最後の時間は過ぎていった。
 テキストの問題は解けても、初見となれば、小学生の場合は特にチカラを発揮することが出来ないことが多い。テキストと同じ問題でも、初見のテストの中にあれば、その練習した問題を見つけていつもの手段で解くことが出来る子供と言うのは、中学生でも多くない事実がある。
 初見問題の中で、自力で解けるもの検索する能力は、模試を経験してきた数に比例する。模試経験を積む以外にもトレーニングの仕方はあるが、モル坊の場合、基礎学力の研磨による標準問題での得点確率アップが最優先事項だった。
 解るものでも得点できなかったのだから。
 問題を読み、自力で訊かれていることを理解して、それに合う答えを用意するといった一連の作業に慣れていなかったのだから、よくあるお決まりの問題パターンを地道に練習していくことが、必要だったのだ。
 だが、それだけで終わってしまった。
 見覚えのあるパターンなら、まず間違えないだろうが、初見問題の耐性はどれほどのものかは、モル坊の基本能力を信じるしかなかったのだ。
 11月の公立一貫校模試のときのように、解けるものを確実に解くことが板についていなければ、0点だって充分にあり得るのである。
            ◇
 小学校内の勉強の範囲であれば、標準模試レヴェルであっても算数ならまず、問題無く高得点がとれる。これは立派だった。
 だが、培ってきた知識やセンスを、過去問題でその形式やパターンに馴化させることが出来なかった。目標校の算数は、独特で難しいことが推測される。
 目標校の算数は独特であるものの、国語は普通だと思われた。限られた過去問題で見る限り、テキストで見かけるようなタイプばかりだから、普通に鍛えていければ良かったのだ。
 だが、モル坊は、国語はあまり強くない。
 「算数」偏重型の現場監督だから、国語の授業をつくることをあまり積極的に考えない。そもそも公立一貫校対策の名義だから、授業コマに「国語」と銘打たれることが全くなかった。また、算数をここまでのレヴェルに出来た反面で、それだけの時間を費やしたということでもある。国語は自習でもやらせてきたがやはり、付き添って勉強する方が最も効率が良かった。
 結局埒が明かないので、12月と1月の授業の半分をわたしの独断で国語にしたようなものだった。B5紙半分程度の長文読解(中学受験向けテキストで小4レヴェル)ですら、満点がとれなかった。ヒドイ得点ではないものの、とても試験問題規模の長文読解を戦い得るだけの実力を磨くための練習まで漕ぎ着けられなかったのである。
            ◇
 国語がもっと普通に出来ていれば、確実な得点に出来たかもしれなかった……!
 算数は場合によっては序盤の計算問題しか正解できないし、このレヴェルの受験生たちはみんな同じような得点であろう。となると、計算問題同様の基本的なもので確実に解けるもので得点していかねばならないことになる。国語は得点すべき箇所が多く取れると思えてならなかっただけに、悔いが残ったものだった。
 競争率が上がらないことを祈るしかないわたしに、
「あれだけ俺たちの邪魔をしたんだから、(モル坊)は受かんなきゃダメでしょ」
教え子その④が軽口を叩いてきた。
 彼はこれでも応援しているのだ。「受かるだろう」と言いたいのだろうが、彼もそうは思えないから、こんなヒネクレた言い方をして笑うのである。本心が見えてしまうだけに、心苦しいものである。
           ◇
 2月8日頃だったか。合格発表があった。
 試験日の応援で会うことが出来なかったから、見に行こうかと思っていた。合格だったときのお母上の反応を見たかったのもある。12月の模試結果の喜び方が面白かったから。
 インターネット上に発表されず、学校の掲示版に直接張り出されるのみの合格発表だった。9時からの15分間のみの公開で、9時15分から入学に関わる説明が始まるスケジュールだった。
 とはいえ、結局行かなかった。
 何が恐ろしいかといえば、不合格だった場合である。合格者が講堂に入っていく中をすごすごと帰るわけで、その帰り道が気まずいのだ。駅までの道のりで何を話せばよいのか、寝不足ストレス過多の頭では考えられなかったのだ。
            ◇
 空虚な気分で、いつも通り職場に出勤すると、
「(モル坊)の結果、聞いた?」
 S中学の中3生がイキナリ訊いてきた。ノッポの秀才で、飄々と図太い台詞を吐く。「ヨユー」と「オレすごくない?」は彼の専売文句として定着していた。
 そんな男が、語調を妙にわきわきさせているように聞こえたことに違和感があったものだったが、果たして、その感覚は間違いではなかった。
「(モル坊)、受かったって。すごくない?」
 その後、教え子その④が「おれは(モル坊)落ちるかと思っていた!」と驚きの声を上げていた。
            ◇
 公立一貫校受験者は、4名いた。すべて、不合格だった。
 わたしの手許に、モル坊を除いて1人。この彼と。
 他で、3人。この中の1人――現場監督の右腕講師が担当していた――が、今回合格可能性が最も期待されていた。
 かくして、今回の中学受験はモル坊の1人勝ちとなり、わたしは勝ち越し将軍になったわけだが、あまり良い気分になれなかったことは既に何度か書いたので割愛する。
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