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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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 騎士マルタ ⑩

 そうして至った、11月――。
 モル坊の自習の様子が、明らかに変わったのである。
            ◇
 自ら、新しい単元を学習していくことは、出来ない。
 これは、変わらなかった。
 但し、1度説明されたものは、実にすんなりと頭に入っていった。まるで、スポンジが水を吸うような感じである。中学受験四則混合計算、複雑な図形の面積、鶴亀算などの特殊な文章題の基本各種、体積などの単位換算、速さの計算……。
 モル坊が、やはり頭の良い子であることが、実によくわかった。
 元々から頭を使うことが出来ている。但し、入っている知識が少ない。社会(地理歴史公民)の単語や漢字の読み書きなどに不安がある。だが、入っているものが少ないから、すごい勢いで知識を吸収できるのだ。それは特に「苦手ではない」と認識した算数に於いて、顕著であった。
 解法を「なるほど!」と理解できれば、それを自らの論理で再構成することが容易く、しかも、その場だけでなく、数日後にもちゃんと解けるようになっているのである。
 奇跡的なくらい、よく出来ていた。
            ◇
 10月末の母上との会談で志望校を「併設高校の無い国立中学」に決めた当初は、モル坊も元の志望校に未練があった。だが、11月を通して、その姿勢が本格化したのだ。
 11月中旬に、公立一貫校受験の模試があった。
「今までと同じように、あまり出来た感じがしなかった」
 受験後に、冴えない表情を見せていたが、これも追い風になった。不可能でない算数課題を毎度取りに来るようにして、それを着実に片付ける自習の習慣が、出来上がってきた。わたしも授業がめいっぱいで首が回らなかったものだったが、モル坊の提出してきた課題はナントカして(どうやったのか、今から思えば不思議です)マルつけをし、バツを授業で扱うようにしていくようになってきた。
            ◇
「(公立一貫校受験の模試)が返ってきたよ」
 12月も半ばに差し掛かりつつあった或る日のこと。現場監督が声をかけてきた。
「(モル坊)は今回よく頑張ったね」
 今まで偏差値30台だった模試である。その度に報告がつらかった記憶がある。さすがにモル坊を怒ることはなかったものの、お母上は「やっぱりキビシイなぁ」という表情をされるのである。目に見えてがっかりする母上とモル坊(ただ、モル坊はなぜか妙な能天気さも持っているので母上と対照的だった)に、前向きな発言をナントカするのがわたしの習慣となっていた。
 見ると、偏差値が53とついていた。
 検査Ⅰと検査Ⅱがあって、偏差値は53と46だった。
 片方は偏差値50に乗らなかったものの、大躍進と言える出来映えであった。
「これなら(B校)受験の土俵に上がれるね」
 クールを装う現場監督だったが、やはり内心はほくほくなのだ。
 B校とは、公立一貫校である。但し、この辺りは公立一貫校Aの方が近い。B校も通えるが通学時間がA校と倍近く変わる。だが、偏差値はA校より低めである。現場監督もその経験上ではB校の合格者は見たことがあるらしい。
 良い結果に喜ぶ現場監督と対照的に、わたしは落ち着いていた。
「いえ、(B校)は受験しません。(国立中学)に的を絞ります」
 ここで初めて、現場監督に目標校を宣言したのである。
            ◇
「やったぁ!」
 モル坊は「おぉー、すげぇー」と控えめ且つ他人事のような感想だったのに対して、母上の反応が顕著だった。喜びのあまり、小さく跳ねられていた。
 余談だが、こうした親御さんの様子を見て、思うものがあった。
「自分の子供が良い出来で、その成功を自分のことのように素直に喜べる親を持つと、きっと子供は幸せになれるのかもしれない」
 やることすることについて、応援をされたことのない身の上から見ると、モル坊の母上は可愛らしくさえ見えたし、良いお母さんなんだなぁと思った。「良い母親」というものがどんなものを指すのかはきっとわからないけれど。
 お母上が喜ぶ様子を見て、漸くわたしも少しホッとしたものであった。
            ◇
 ここで、またモル坊は「B校を受験したい」と言い始めていた。
 やはり、中高一貫校の魅力は大きいのだ。
 いくら一生懸命やっても、元々視野にすら入れていなかった学校が目標であるから、イマイチ実感が湧かないのも大きいのかもしれない。説明会も行っていないのだ。
 また、どんな学校か、建物すら見に行っていないばかりか、そのホームページも見ていないのだ。
 もちろん、いくらモル坊がゴネたところで、B校を目標校にするつもりはなかった。全然そのつもりが無かったと断言するとウソが混じるが、天変地異クラスの急激な成長を認められるのであれば、勝算の可能性が僅かでも残っているのであれば、やはりB校受験をさせてあげたいと思ってしまうのは、わたしの甘さなのかもしれない。
 それとは裏腹に、母上はオトコマエだった。
「A校の願書? お母さんが破って捨ててたよ?」
 1月初旬、B校の願書が残してあるかを確認したときのことだった。辛うじて、B校の願書は残されていた。
 ただ、モル坊のあっけらかんとした言葉に、ずっこけてしまった。
 A校を受験できないとどこかで理解はしていても、わたしなら絶対にそんなことは出来なかっただろう。万に1つのときのために、最後の最後まで隠し持っている気がした。そればかりか、思い出の品にすらしたかもしれない。
 母上の潔さに、舌を巻いたものである。
            ◇
 閑話休題。
 ただ、それを機に12月の冬期休暇前に、モル坊はダレ始めた。
 しかしながら、このときにかけた脅しも、効を奏した。
 冬期休暇に入る直前に、「12月末日に、小学校標準レヴェルの模試の過去問題でテストする」ことを、母上の前でモル坊に説いた。
 この教室では小学生対象の模試(模擬試験)は、3種類ある。
 公立一貫校受験の模試。
 私立中学受験の模試。
 非受験小学生の標準学力測定のための模試(以下「標準模試」と記す)。
 「標準模試」といえども、小6生の平均点は8割ではない。50点から60点程度である。70点取れば、偏差値55くらいまでつく。中学受験で或る程度の結果を残したければ、この標準模試で8割を超えることが登竜門となるのだ。
 さて。モル坊は4月の段階で、40点も取れなかったわけである。
「この模試過去問題によるテストで、80点取れなければ、受験自体を断念することを提案するものとする。80点取れなければ、中学受験を中止するということだ!」
 国立中学に志望先を変更させ、もはや、モル坊に関しては親御さんの公認で全権を委任されている感じですらあったから、こうした強い発言も信に足るものになった。
 モル坊の眼の色が変わった。
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