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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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 騎士マルタ ⑥

 モル坊は、よく懐いた。
 基本的にわたしの授業は、問題演習とそのオーソドックスな解法を提示するだけのルーティンワークではない。公式の背景や原理原則となる要素、身の周りにあるものの例を挙げて、話をする。ゆえに、問題の演習量は少ないし、場合によっては1問に対して、最も能率の上がる解き方を提示することもなく、子供が途中まで考えてくれたやり方を使って、正解にアプローチしてその論理を一貫させることをやる。
 科目やジャンルを問わず、話は多岐に渡る。冗談も適度に混ぜる。
 理屈に適っているが、想像するとオカシナコトになるような例で、笑いを取る。
 大概の場合は、話を面白がってくれる。
 大きくズレた話題が、最終的に本題に戻ってくるのだから、全然関係の無いように見えて、実は全てつながっていることが理解できると、聞いている子供は「おお!」となる。
            ◇
 この「おお!」が出た男の子が、よく懐く。
 懐くと、授業と授業外を問わず、付きまとうようになるのが小学生だ。
 また、頭の良い子だと勉強内容だけでなく、解らないコトや疑問に思ったことをなんでも聞いてくるようになる。
 また、行動1つ1つを報告してくる。
「せんせー、プリント終わりました!」
「せんせー、おなかが減りました!」
「せんせー、トイレに行ってきます!」
「せんせー、おなかが減ったので隣のコンビニでおにぎり買ってきます!」
 モル坊も例外なく、こうした言葉を矢継ぎ早に並べてくる。
 これに加えて、誰かが喋ったことや友達同士であったこと、そしてここに至るまでに身に降りかかったことなども喋る。
 もちろん、子供のこうしたアクションを全部、キチンと聴いて相槌を打つ。
            ◇
 余談、である。
 1人ならともかく、これが2人3人……と増えると、大変なコトになる。
 仕事で報告書を書いていても、隣で数人の子供たちが同時に色々と喋るのだから、反応しようとすると、頻繁にこちらの脳が誤作動を起こす。つまり、次にとるべき行動が取れなくなる。なにかしようとしているのに咄嗟に脳がガクンッと一時停止する。ちょうど電気のブレイカーが落ちる感じである。
 恐らく、育児ノイローゼとはこうしたことの繰り返しで、ストレスが溜まりイライラしていくのだ。
 イライラしてくることは少ないが、イライラしてきた場合に、これを如何に見せないようにするかが、わたしの仕事の1つの特徴でもある。
 子供の相手なのだからイライラなど感じてはいけないのだが、やはり時間内にやらなくてはならないタスクがある中で、子供2人に2通りの話題を吹っかけられると、脳のキャパシティは限界だ。途中から段々ワケが解らなくなっていく。そこにもう1人なんか来たりするなら大変だ。
 イライラというよりは、一時的な錯乱・混乱が繰り返し起こる。これが強力なストレスになるのだろう。
            ◇
 モル坊は週1回しか授業が無いが、わたしの授業スケジュールは毎日満杯だった。
 当然、モル坊メインでかまってあげられる時間など少ない彼の授業中しかないわけで、そんなだから、他の授業中でもモル坊が5分に1回という頻度で授業をするわたしの後ろに現れて、1言かけてもらえる機会をうかがっている。
 自習が捗らないのだ。
            ◇
 「勉強する」というアクションを知っている子供ではないから、命じられたことをサクッと片付ける感覚が板についていないのだ。
 しかしながら、こうした子供には悪意も悪気もないことが多い。モル坊の雰囲気を見ていると、無邪気さだけがある感じだったので、「授業の邪魔だ」などといって怒ることをしなかった。
            ◇
 放置されている子供はきっと、1言で良いから、構ってもらいたいのだ。
 何の変哲もない12歳児――それも何か目的に関して確信できたものがあるわけでもないような子供――が、1時間も2時間も大人しく独りで座っていること自体、出来るとは思えない。しかも、落ち着きの無い男の子だ。これを無理矢理座らせるのは大きな我慢を強いるし、そうしたところでガリガリ勉強するようになるとは、とても思えないのだ。
 むしろ、そうやって駆けずり回って好く大人からの穏やかな1言をもらって、「うん、わかった!」と言わせてまた戻って、また5分後に同じコトをやる方が自然だと思うし、むしろ、子供のストレスを最小限にできる気がしたものである。
 こんなことを繰り返していた。
            ◇
 自習の効率は、頗る悪かった。
 5時間近くいたのに、B5紙1枚か2枚程度だった。
 そんな様子を見ていても、現場監督(塾長)は課題を出すとか注意するなどはおろか、何も反応を示さなかった。
 こうして、3月から7月までが終わった。
 非受験生の小6生の模試は2科偏差値40がやっとだった。
 公立一貫校向けの模試の偏差値は、30台だった。
 だが、非常によく懐いていたし、仲良くもなった。
 他、計算の正答率は高くないし、慎重さにも欠けるため、解ける問題も落としていたが、割合に関する単元の基本事項(分数の表現、比の使い方各種、百分率などの計算での活用)は、マスターはできた。少ないマルはこの手の基本問題だった。授業で扱ったものは、確実に得点していた。算数は、苦手でないことが判ってきた。
 但し――、4か月でその程度だったのだ。
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