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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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 夢に生きることとは何か

 小4生の頃に、私学受験の目的で入ってきた姉妹の姉貴の方と、同じ学校の男の子。坊やの方は、小6生で入ってきた。公立一貫校志望で切れる子だが、かなり旗色の悪い境遇の子である。弟が新しく出来て家庭がおおわらわ、その結果両親が忙しくて、家庭で勉強を見てやることが適わない。授業も週1回のみ。スロゥスターターだし、これでは合格どころか、土俵に上がれるか否かの問題をも通り越して、良いものが身につくかどうかも怪しい。
 もっとも、私が担当している。他の講師どもが担当していたら最悪だが、私の目が黒い以上は、最低限はカヴァーする。
 先日11日の土曜日も、2人を自習に呼び出して、一緒に勉強した。
            ◇
 13時から19時。内容は、国語の説明文を2本でテキスト4ページ、理科の基本単元を3つ(流水の働き、物の溶け方、物の燃え方)でテキスト12ページ、算数の設問(柱体と錐体の体積や表面積計算)を大問で1つ。
 6時間の成果としては、少ないのかもしれないが、理科社会を授業でとっておらず、また算数が苦手なお嬢様と国語が苦手な坊やである。彼女らが飽きずにこれだけの時間を勉強できたのだから、それ自体が成果ではあると思う。
            ◇
 子供たちは、よく笑ってくれた。
 お嬢ちゃんの方は、「おねえさん」になってきていて、男の人を避ける傾向が出てきている感じがする。ほとんどの少女はそうなっていくものだ。けれども、それでも充分過ぎるくらい、善い表情をしてくれる。
 だから、何かが切れた。
            ◇
 毒気のようなものを抜かれた気がした。
 こうした子に、あまり不安をかけたりしてはならないと、ハッキリ思った。
 11月30日に、会社全体の研修がある。
 忘れもしない、昨年に随分な目に遭わせてくれた、あの研修である。
 この会社は屈辱と無駄と心の痛みばかりをプレゼントしてくれる。ゴミみたいな人間が多すぎる。それで60年ももっているのだから、世の中とはどれだけデタラメなのか、実によくわかる。
 仕事を辞めるつもりで動いていた。
 バカどもに思い知らせてやるつもりですらいた。
 だが、気が変わった。
 この子らのために、もう少しだけ、辛抱することにしようかと思った。
          ◇◇◇
 或るノンフィクションの一節で、読んでいたときに想像できなかったところがあったのだが、それが今に理解できた気がするので、それを記す。
 アジアの某国の老ヤクザの話だそうな。
 少数民族出身の彼がやっと手に入れ、経営も軌道に乗ってきた農園があった。第二次大戦の末の少数民族の独立運動の中で、彼は農園を手にしたわけだが、そこは外国の土地だ。国内が安定してきた頃に、国軍が押し寄せてきて、彼の農園を包囲してしまった。
 元々軍人だったせいもあり、彼には2千人の兵隊がいた。手塩をかけて、ここまで育てた農園だ。地元の少数民族の暮らしも支えることができた。そんな思い入れの強い農園だったから、それを取り上げようとしているものに対しては、容赦はしない。玉砕覚悟で戦う決心をした。
 肚が極まって、ふうっとため息をついた。そのときだった。
 彼の傍らにいた少女が、彼の首筋に吸い付いていたヒルに気が付いて、ヒルをつまみ上げたのである。
 そのとき、何かが崩れたという。
 玉砕覚悟で戦う決意が、折れた。彼は農園を、国軍に明け渡すのだった――。
            ◇
 少女たちは、かつてマフィアの許で幼女売春をさせられていた。戦後の彼がその指揮部隊と共にこの土地に流れてきたときにマフィアを一掃したわけだが、そこで売春させられていた少女たちもまた、この農園で働いていたわけである。農園は地元民の生活の依り代でもあったわけだ。少女たちにとってみれば、彼は英雄のような存在であり、彼がどんな状況にあっても、絶対的な信頼があったのだろう。
 人を憎むとき、殺戮も玉砕も厭わないような狂気めいた気性の激しさを持っている輩とは、そんな自分に信じてついてきてくれる者のちょっとしたやさしさに対して、弱いのだ。
 戦争を行えば、農園も荒廃し、戦闘員でない農園労働者たちにも甚大な被害が及ぶ。
 子供の何気ない行動が、彼の緊張と勢いを消し去った。それで、持ち前の冷静さを取り戻したのかもしれない。
          ◇◇◇
 気分が悪くなるくらいの怒りと不愉快とを抱えていた。
 それが数年にもなると、狂気もまた、普通に通うようになる。
 だが、ふと我に返ってみると、傍らには、我が話を聴いて素直に笑ってくれる子がいる。
 ふんわりと笑う顔を見て、「やられた」と思ったのである。
 この笑顔を曇らせるようなことはしたくない。
 ……なんか実に自然にそう思ってしまったから、もう少しの間だけ、この子らを守ろうと思うことにしたのである。
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