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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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 ずっとあなたが・・・ 2

 慶應の中等部に、行きたい――。
 そう志願して入会してきたそのチビッコは、なるほど、確かに普通の子供よりも、“少し機転が利く子”だった。
            ◇
 わたしはいつも申していることの1つだが、
「子供には、阿呆がいない」
というものがある。学習障害などは除いて、健常者であれば大抵、「ちょっと機転が利く子」か「普通の子」であり、その差はひどく大きなものではない。前者の割合だって少ないとは思えないくらいである。その子のセンスが、今の世間の体制にマッチしているに過ぎない。ゆえに、“ちょっと機転が利く”という表現にしている。
            ◇
 さて。彼は算数計算を始め、理解力の高さはあったものの、如何せん、自分の感情を優先し抑制することをしないから、大人のいうコトをマトモに聞けない子供だった。1人っ子特有のワガママさも色濃く持っていた。まずは倫理を身につけることが、急務だった。
            ◇
 小学校に通い出したことも手伝って、小2生、小3生の頃までには「授業を受ける姿勢」は身についてきた。他方で、できていないのは、「課された宿題をキチンとやってくること」と「ノートを活用すること」だった。
 宿題も計画を立てるのは好きだった。計画表は毎回喜んで書くのだが、書くだけ書いて満足するらしく、その計画表も3日実行できたことが無かった。
 ノートは、とる。彼が「書きたい」と思った時のみだが、とりあえず「必要だと思うものはメモをすること」は、できていた。
 しかし、これはノートを書いたことを周囲の大人に褒めてもらうことが目的だった。宿題をやってこないし、だから解らないものを解説されて理解できても、宿題でその類題の練習をしてこない。ノートをとっていても、それを自分で見ないし、そのうちノートをもってこなくなった。代わりに、両親から買ってもらった旺文社の中学受験の強大な参考書を持ってきて、それを読む感じだった。しかも、その参考書を押し付けてくる。
 思えば、彼の悪癖はこのときから始まっていた。
 ノートが無くて、代わりの紙に書くが、それを大事にしない。授業の席に置いていくし、鞄にしまっても、ゴミにしてしまう。そのうち噛んだガムのゴミなども混ざり、いつしか鞄はゴミ箱みたいになっていった。鞄を開けてわたしがゴミを片付けて中身の整理をして、「これではダメだ、こうすべきでしょう」と提示しても、自分で鞄を整理してきたことが無い。閑話休題、ノートに転記することを再三説いたものだがうまくいかず、ノートを持っている時に書かせるのだが、そのノート自体、1度書いたらもう見ることが無い。興味を失くすのだ。また、ノートが使い終わっていても、なかなか新調しない。
 結果として小6生までに、
「授業の用意を、してこない」
ことが、彼のスタンスになっていった。筆記具もノートもテキストも、もちろん配られたプリントも、失くすか持ってこないか。プリントはキレイに畳んだり、「ファイルにする」などを指示したりしてきたことも、数度では済まない。結局、わたしが畳んでテキストなどに挟んでやるなどしていたくらいだった。あるとき、大型のファイルを嵩張るのに数冊も持ってきたことがあったが、それは両親に買ってもらったことを自慢するためだった。結局、次から持ってこないし、自らプリントをファイルすることもなかった。
 空手などの習い事同様、長続きしないのだ。
            ◇
 だが、そうやって口を酸っぱくしつつも、穏やかに注意を繰り返し、出来なければ例を提示して、気長に気長にやっていったのに、それでも直らないし反省が無い。私がそれでも怒り音を立てないのは、彼の実力とそれに対する周囲の反応があったからだった。
            ◇
 彼が解けないのは、応用問題程度なのだ。
 つまり、基本問題や練習問題は普通に解けるのである。これは、小学生にしては完成度が高かった。小学生程度だと解ける自信のある問題でも、模試などの本番で解けなくなる現象は、非常によくあることなのだ。
 彼は模試などでは「練習問題レヴェル」と思われるような、いわゆる「得点すべき問題」は、ほぼパーフェクトで正解できるのである。それだけで偏差値60以上が軽くつく事実もビックリだが、中学受験の問題を1度でも見たことがある方なら、12歳に満たない子供がああいったレヴェルを初見で解くことを考えたら、ビックリでは済まされない事実があるかと思う。
 さて、計算ミスこそするものの、知識を自慢したいから図鑑の類は普段からよく読むわけで、説明文は極めて強い。知識(誇示)欲が高いから漢字も好きで、漢字検定の存在を知ってから、両親に漢検のテキストを買ってもらって小6生までに3級を持つに至っていた。TBSのアナウンサーが漢検2級の資格が要るというから、彼の「好きなものに対する集中力」は、確かに立派ではあるのだ。小4生では標準模試しか受けられないとはいえ、その偏差値は65、小5生になってから、年に2度の中学受験向けの模試で偏差値70前後をとっていた。
            ◇
 数字がよろしければ、モラルは問わない――この会社の塾長たちは、こうした傾向があるらしい。不良とは決して言えないが、授業中に気が乗らなければ椅子を並べて自分専用のベッドにして寝てみたり、授業の用意をまったくしなくなったりするなどの彼の態度の悪さに、何も反応してこなかったのである。むしろ、「この成績をキープ」などと、比較的常識人だと思えた前塾長ですら、わたしにそう命じる。わたしがガツンと叱っても、四面楚歌になるだけだったのだ。それで成績が傾いたり、「塾を辞める」などになれば、大問題が生じる。親御さんとの面談をするのは塾長なのだが、その塾長たちは彼の授業中の態度を、両親に報告したことが無い。毎度わたしは穏やかに注意を繰り返すものの、結局、直ることは無かったのであった。
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