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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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体制下の一光

「そういえば、周囲は現役ばかりです」
 いつも23時ころまで職場にとどまる新人の学生講師氏たちの顔ぶれは決まっている。
 近頃の大学受験は、現役合格が主流だと塾長は語る。
「浪人してでも大学に入るという世の中ではなくなりつつあるんだ」
 大学側は、偏差値や競争率を下げないように必死だ。企業の戦略じみたものを感じる。
 例えば、AO入試――推薦や一芸に通じた自信家を面接や手軽な試験で学生として採用する入試方式――で募集人員の大半を採り、一般入試ではあまり募集をかけないことで、偏差値ランクの低下を防ぐ大学がある。また、入試を数回にすることで、競争率の安定を図るところもある。例えば、3回入試を行うことで、試験を受ける学生の絶対数を増やすなどである。どちらにしても、表面上の数値に過ぎないが、それでも体面にはなるのである。
「それだけ、学力が低下しやすくなってるんだ」
 これは塾長。
 この塾の会社員たちは、普通にどこかオカシイような気がするのだが、一応妙なマジメさはあるから、学力の低下や怠惰さに関しては、かなり渋いところを持っている。
「先生は、一般入試だったら、青学に受かる自信はあった?」
 オキニイリの学生講師氏に、塾長が尋ねる。中学時代に43/45の内申点を誇るとはいうが、じゃあ高校時代はどうなんだとは、私の物思いである。
「(推薦合格をもらった塾生)さんが、一般受験して早稲田に受かると思うか?」
「(推薦合格をもらった塾生)さんが、一般受験して帝京に受かると思える?」
 この辺りは、私も同感であった。
 学生講師に、地方振興活動を主宰する団体の頭がいて、彼はAO入試で慶応大学に採用された。これくらいド派手で特異さがあれば、まだ解る。だが、なんの変哲もない学生が、中途半端な希望を書いた論文と銘打った作文を見て、少なくとも私が「ほぉ」と思えるようなものは、今のトコロここの推薦合格者の高校生では見かけていない。……まぁ、作文で私を唸らせること自体が、なかなか難しいのかもしれないけれど、教え子その④の作文には唸った。また、ミケランジェロの小学生時代の卒業作文を見る機会があって(本人が自分が開催した研修で持ってきた)それも立派だった。
 ……余談だが、卒論1つを見ても、彼らは優等生だとわかる反面で、私は自分が相当個性的だと自覚したものもある。同じ卒論でも、一般的正論に連なるものが優秀だと思える要素ではあるのだろう。それが教え子その④であり、更にはミケランジェロでもある。しかし、それだって書く者は学年で唯一というわけではなかろう。マヌケな話題ではあったが、私はその学年で1人しか描かないテーマだった。こうした、強烈な“個性”を感じることが、能力の高いミケランジェロを見ていても、まだ弱い。むしろ、自身の個性をよりまざまざと、実感しているくらいだ。
 閑話休題。
 私の時代でも、大したレヴェルの大学ではないが、周囲にかなりの数の浪人経験者がいた。
 しかし、今は、レヴェルを下げてでも“現役合格”なのである。それで、就職なのである。
 社会の質が低下していく傾向を、塾長は暗黙で示した。
 まったく同感せざるを得ないが、こういう時代だからこそ、みっともなくとも自前で苦労をするようなセンスを以て己を研磨するような者が光ることもあるのではないか、と頼もしい強者の出現を期待する今日この頃であった。
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