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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
2013/10≪  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  ≫ 2013/12

 獅子身中の、隠しボス。

 塾長は、教え子その④を、畏れている。
 性格は合わないのだが、中2生でありしかも学年トップの実力をもつ。
 地元の中学校では、県下一の高校に入学できる者は毎年3人いるかいないかだけに、この高校を何とか狙える位置をキープできる実力者は、それこそ教室の白星になってくれる。塾長曰く彼一人で少なくとも10人力だそうな。教え子その④の塾生としての存在価値は、一般塾生10人分だと言う。
「だって、20人集めたって、トップ校を目指せる成績の子なんかいないじゃん」
 だが、オリコウサンで良い子だが、性格や嗜好はやや気難しい。ましてや中2生という不安定さがある。普通の人は扱いづらさを感じるところはあるのかもしれない。
            ◇
「面談の度に、退会を突き付けられるのではないかと冷や冷やしている。いつ辞めてもおかしくない」
 と塾長は教え子その④に関して、表情は硬い。私がいくら大丈夫だと言っても、何も信じるところがない。
 だって、めちゃくちゃ懐いている。
 それだけではなく、これだけシッカリした本人が「辞める予定はない」とすら口にしているのだから。そして、親御さんの様子を訊いても「辞めることを考えてはいないと思う」と言うくらい。
 実は、まごちゃんをめぐる件で、連絡をとれるようになったのだが、そのときのやりとりでそれなりにうまく立ち回ったつもりだった。その結果、私への信用は高まっている。
            ◇
 私が辞めても塾長を信じてやれというような内容だったハズだ。私が塾長と反りが合わずに退職しても、あの塾長の経験は信じるに値するので、安心して勉強を続けても大丈夫だと思います――、そういう感じだった。つまり、私が辞職と共に独立して教え子その④を勧誘するようなことに相手は警戒があるかもしれないから、そうしたことには一切触れずに率直に事実とこの塾会社の事情を少しお話しして、そう括ったわけである。
 その結果が、今回の塾長の態度で、ハッキリ分かったのである。
「いつ辞めてもおかしくないから覚悟している」
 と言って止まなかった塾長が、
「大丈夫、辞めないと思う」
 と、話すようになっていた。
 塾長の知識と経験は信用するに値するから、とウマイコト口を利いたことが、効を奏したことを直感した。
 私の先の一手が、失敗ではなく効果があったことが、わかったわけである。
 塾長は粗忽だから、本人は手応えがあったと言ってもそれほどアテにならないようなタイプであることは、もう充分わかっている。或る程度鋭さのある方なら、あまり感じの良いタイプの人種でないことはなんとなく感じられるハズだからだ。話の仕方も強引さがあるから、お客様はその会話で不快さを感じることもあると思われる。
 口は軽いが、重要なことや自分にとってひどく面白くないことは喋らないだけの小賢しい分別はあるようだから、こうした態度や発言の急変で何かあったと予想することは、まず間違いがないだろう。
            ◇
 教え子その④らの信用――。
 小5後半より私の許を選んできて以来、忠実ですらある。そして、その保護者とのやりとり以降――今から1箇月前くらいの頃に、「じゃあ、先生が辞めさせられたら、俺も辞めることになる」という言葉を彼の口から自然体で引き出せた。今までで最もつながりが深い状態が出来上がっている。
 だから、私が辞めでもしない限り、共にあるであろうことが大体わかる。
 ゆえに、この人や会社が私に理不尽な仕打ちを吹っかければ、この教室に大打撃を与えることが私には実は可能なのである。
            ◇
 そう。
 教え子その④の紹介できた同輩たちも、強い。ちょっと頑張れば、5科合計点400をゆうに超えるような子らである。さすがに教え子その④本人には及ばないが、素直だし良い子たちではあるのだ。それらもまた、教え子その④と仲が良い上に、私がウマイコト摑んでいるものがある。
 気に入った者でもない限り褒める言葉を発しない塾長が、面談やテスト後の話での保護者や塾生の発言を握りつぶし切れずに、評価の片鱗を口にすることが起こるくらいである。
 それくらいに強力な教え子を率いている。
            ◇
「教え子その④は、辞めさせちゃあいけないよ」
 塾長の私見が、変わっている。
 今まで何度か面談をしてきて、考えや見込みが変わるくらいの手応えを感じたことに背景があることを、この人は知らない。
 誰にも話すわけにはいかない。
 いや、話して面白さを共感できるくらいの人物が、ここにはいない。
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