FC2ブログ

ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
2011/12≪ 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  ≫ 2012/02

笑うべきか蔑むべきかあるいは・・・

 露骨なあつかましさを見て、つい醜いなぁ、と思ってしまった。
 あまりにも、あまりにもな物言いだけれど、こうしたものを目の当たりにしたとき、普通はどういうことを思うのだろうか。
 かくいう私は苦笑を噛み殺していました。忍び笑いともいうのかは不明。
          ◇◇◇
 その日、朝早くからラーメン屋の厨房に降り立った私は、開店準備を一通り終えて、いつも通り、自前の焼きそばをつくった。
 餃子を焼くための、超高熱の鉄板で、一気に仕上げるアレである。
 いつも御飯茶碗に一杯ずつ、オープンからのスタッフに裾分けをしていた。
 で、その日は、つくり始めがいつもより少し早かった。
 あるいは、他のスタッフの出勤がみんな少しずつ遅かったのかもしれない。
 つくり終えて、一人悠々と食しているところに、やっと一人出勤してきた。
            ◇
 以前にも登場した、冷蔵庫みたいな主婦のスタッフである。
 「オバタリアン」と言う単語を出すと、今時はどのようなイメージを抱くのかは定かではないが、ご多分に漏れないイメージのそれである。
            ◇
 茶碗にとった焼きそばをいつも通り差し上げた。いつもおいしいと高評してくれる。
 茶碗は、3つあった。
 それらは、焼きそばを作り終えてさあーっと洗った鉄板の上に置いていた。鉄板は消火状態でも水がすぐに沸騰して蒸発するくらい。保温が可能なのだ。
 これは、開店時によく登場するメンツの分――店長氏と社員氏あるいは他のスタッフなど――であった。
 冷蔵庫さんに差し上げたので、残り2つとなったわけである。
            ◇
「店長氏や社員氏の分? これ?」
 冷蔵庫さんの声がする。焼きそばを咀嚼しているので、頷く。
「残しておいてもイイコトないと思うよ。まただらだら喋くって仕事をしない原因になると思わない?」
 まったくその通りだと、相槌を打つ。
 実際、店長氏はごちゃごちゃくだらんお喋りをするだけで、朝の忙しいときは輪をかけて役に立たない。というか、邪魔になる。
「今のうちにかたづけちゃおっか。1つずつ分けない?」
 熱い視線で、鉄板の上の茶碗2つを見ていらっしゃる。
 別に取り分けた分を誰が食べようが知ったことではないので、適当に「どうぞ」と言っておく。少なくとも、私は自分のだから一人前を食しているので、茶碗1つ分は要らないよ、証拠隠滅なら2つともどうぞとも言っておいた。
            ◇
 なんか茶碗が熱いので飛び上がる声が聞こえたが、喜んで証拠隠滅活動をしていらっさった。
 まぁ。なんというか。
 この鉄板焼きそばを、私が思った以上にお気に召していらっしゃるのだということなのだ。
 ま、確かにこれは私の特権だ。いい歳をした主婦が自前とはいえ私と同じ行動は取りづらいのだろう。朝から厨房で焼きそばをつくって喰っている様子は、怪訝ではある。
 だから賤しいと思っても、それを打ち消しておく。
 食べたくても、また簡単に出来ると思われる物事だが、意外にもこの人が自力で同じ物を手に入れることは出来ないのだから。
            ◇
 しかし。
 証拠隠滅を楯にして、取り置きにありついたのは、まぁいい。
 この時点で十分みっともないのかもしれないが、或る意味、内心は分かりながらも建前は適っているから冗談の類で笑える。
 だが、どういうわけか、私が自分の分を食べ終えて戻ってみると、茶碗が1つ残っている。
 証拠隠滅にすらなってないじゃん――!
 そう叫びかけた。
 私の分の残りとして置いておいたわけではない。その後、「食べないの?」と聞かれたので「よろしければそちらもどうぞ」と明言しているからだ。
 かくして、鉄板には関東の残り1個が晒されたまま時は過ぎ、店長氏と社員氏が現れることになるのであった。
スポンサーサイト