行動派マイノリティ
この社会というか、この世間というか、この世界というべきか。
それに対する自らの身の置き方を考えるときがある。
◇
移ろいゆく世間と自らのおかれた状況とを、相対的に見ることで正確に把握していて、絶対的ともいうべき感情や俗の価値観に捉われずに、<状況の中の自分>を意識していながらも、そこでの自分が演じるべき立場や果たすべき役割をこなす――。
こんな感じのものを、塩野七生さんは「行動的ペシミスト」と称していらっしゃった。
(『サイレント・マイノリティ』より要約)
◇
「ペシミスト」の意味が分からなかったので調べてみたら、悲観論者とか厭世者のことらしい。
生まれた年に、ではなく「社会人になるまでの育った時代に」大きな事件があるという、注目されにくい世代であることが少なからずとも、背景にあるのだろう。
◇◇◇
それはともかく。<自分の役割>というものが、あるように思えてならないことがある。
人間には「定まった運命」があるとまではいわない。世情と、そのときの自分自身の立場が分かるとき、自分がこなすべきタスクとか果たすべき役割とかがあるように感じることが、人にはあるのではないか。
◇
この塾は3月で一旦契約更新になる。それで打ちとめるつもりでいた。
給料が振り込まれないことで一旦波立ったし、まず塾長自体が少しおかしいタイプの人間である。私のような新参者は、他の講師の肚の声を聞ける機会はないが、トップクラスのベテラン講師ですら「塾長キモい」と話しているのを聞いたことが何度かある。
本能的に感じるリスクがあるのだ。
◇
だが、先日のこと。
私が今後受け持つであろう子とその前後学年の学生を確認すると、偏差値50がやっとである。実際、今年の結果は偏差値40台の私立学校が関の山だった。そんなだから、生徒が少なくなる。
――使命感みたいなものを感じました。塾に対してではなく、その子に対して。
◇
私が辞めれば、他の者にその子を任せることになるからだ。この子は偏差値40台に落ち着かせるべきではない。
55ラインを確定させることをまず目標にするか。
いや。タスクは難しい方が燃える。最終的に60を目指そうか……。
◇
私が、こんな場違いなところに召喚されたのは、そんな理由かもしれない。
その子に対して一貫しつつ、今までの先生たちと違う指導をやってのけられるのは、私くらいのものだ。
やれやれ。
その子にとって私は、悪い方向へ導く悪魔となるのか、それとも良い方向へ導く聖者となるのか。
◇
ああ――。下っ端なのに、なんでこんなに荷が重たいんだろう。
妖怪だの宇宙人だの怪人だのモアイだの落ち武者の亡霊だのサムライの生き残りだのキケンなイキモノだの――色んなところで人間扱いされないものだし、確かに一般の人間らしく生きてはいないけれど。
(あ、「サムライの生き残り」はギリギリ人間扱いか)
少なくとも今回の荷が重たく感じる間は、まだ落ちぶれちゃあいないのかもしれないな。
◇◇◇
追記。
2月22日、新記録。
1262642人中、15222位。
もっとも、その後の数日間はご覧の通り、手を抜いていたので久しぶりに20万位近くまで落っこちた。
まったく、落ちぶれたものだが、まだまだ何とかなれる余地はあるのかも。
尚、本記事は24日分ということです。
それに対する自らの身の置き方を考えるときがある。
◇
移ろいゆく世間と自らのおかれた状況とを、相対的に見ることで正確に把握していて、絶対的ともいうべき感情や俗の価値観に捉われずに、<状況の中の自分>を意識していながらも、そこでの自分が演じるべき立場や果たすべき役割をこなす――。
こんな感じのものを、塩野七生さんは「行動的ペシミスト」と称していらっしゃった。
(『サイレント・マイノリティ』より要約)
◇
「ペシミスト」の意味が分からなかったので調べてみたら、悲観論者とか厭世者のことらしい。
生まれた年に、ではなく「社会人になるまでの育った時代に」大きな事件があるという、注目されにくい世代であることが少なからずとも、背景にあるのだろう。
◇◇◇
それはともかく。<自分の役割>というものが、あるように思えてならないことがある。
人間には「定まった運命」があるとまではいわない。世情と、そのときの自分自身の立場が分かるとき、自分がこなすべきタスクとか果たすべき役割とかがあるように感じることが、人にはあるのではないか。
◇
この塾は3月で一旦契約更新になる。それで打ちとめるつもりでいた。
給料が振り込まれないことで一旦波立ったし、まず塾長自体が少しおかしいタイプの人間である。私のような新参者は、他の講師の肚の声を聞ける機会はないが、トップクラスのベテラン講師ですら「塾長キモい」と話しているのを聞いたことが何度かある。
本能的に感じるリスクがあるのだ。
◇
だが、先日のこと。
私が今後受け持つであろう子とその前後学年の学生を確認すると、偏差値50がやっとである。実際、今年の結果は偏差値40台の私立学校が関の山だった。そんなだから、生徒が少なくなる。
――使命感みたいなものを感じました。塾に対してではなく、その子に対して。
◇
私が辞めれば、他の者にその子を任せることになるからだ。この子は偏差値40台に落ち着かせるべきではない。
55ラインを確定させることをまず目標にするか。
いや。タスクは難しい方が燃える。最終的に60を目指そうか……。
◇
私が、こんな場違いなところに召喚されたのは、そんな理由かもしれない。
その子に対して一貫しつつ、今までの先生たちと違う指導をやってのけられるのは、私くらいのものだ。
やれやれ。
その子にとって私は、悪い方向へ導く悪魔となるのか、それとも良い方向へ導く聖者となるのか。
◇
ああ――。下っ端なのに、なんでこんなに荷が重たいんだろう。
妖怪だの宇宙人だの怪人だのモアイだの落ち武者の亡霊だのサムライの生き残りだのキケンなイキモノだの――色んなところで人間扱いされないものだし、確かに一般の人間らしく生きてはいないけれど。
(あ、「サムライの生き残り」はギリギリ人間扱いか)
少なくとも今回の荷が重たく感じる間は、まだ落ちぶれちゃあいないのかもしれないな。
◇◇◇
追記。
2月22日、新記録。
1262642人中、15222位。
もっとも、その後の数日間はご覧の通り、手を抜いていたので久しぶりに20万位近くまで落っこちた。
まったく、落ちぶれたものだが、まだまだ何とかなれる余地はあるのかも。
尚、本記事は24日分ということです。
- 2010/02/26 (金)00:03:04
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◇◇◇
塾講師業務で、私になつく学生は皆無といって良い。
2月は受験が終わるので、塾講師は仕事が少なくなる。だが、私ほど3回目に顔を合わせることがなくなる確率が高い講師は、恐らくあの教室ではいないのではないか。
勉強方法など経験的なものを鑑みても、私にはまったく向いていない職業である。
悔しいが、人生初かもしれない。継続的なもので、これはダメだと感じたのは。
◇
それでも2人ほど、私につく学生がいる。
私につく学生の親密度は、他の講師と学生のそれよりも差があるように見える。
私がいると、必ず傍にくるし、離れないのだ。
◇
基本的に、学生は授業が連なればそれなりに親しくなれるもので、講師の顔を見ると近付いてきて雑談をするようになる。が、雑談が一通りすめば、その場から離れるものだが、この子らは強制的な背景(授業の開始や親御さんのお迎えなど)がない限り、どういうわけか必ず傍にいるのである。
しかも、その2人はその教室の中で双璧を為すトップクラスの「いい子」だったりするから、他の講師や塾長からみれば、謎だ。「おまえはクセが強すぎるから、タイプが合えば最高なんだけど」とは塾長の解釈。
確かに、その子ら2人は良い子だ。実際喋る内容や話し方も、聡い感じがする。
◇◇◇
1人はもう卒業なのだが、もう1人は今年が本番である。
そこで思った。
どうやら私は――、その子の人生物語におけるキィパーソンなのかもしれない。