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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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行動派マイノリティ

 この子は、絶対に受かってもらわねばなるまい――。
          ◇◇◇
 塾講師業務で、私になつく学生は皆無といって良い。
 2月は受験が終わるので、塾講師は仕事が少なくなる。だが、私ほど3回目に顔を合わせることがなくなる確率が高い講師は、恐らくあの教室ではいないのではないか。
 勉強方法など経験的なものを鑑みても、私にはまったく向いていない職業である。
 悔しいが、人生初かもしれない。継続的なもので、これはダメだと感じたのは。
            ◇
 それでも2人ほど、私につく学生がいる。
 私につく学生の親密度は、他の講師と学生のそれよりも差があるように見える。
 私がいると、必ず傍にくるし、離れないのだ。
            ◇
 基本的に、学生は授業が連なればそれなりに親しくなれるもので、講師の顔を見ると近付いてきて雑談をするようになる。が、雑談が一通りすめば、その場から離れるものだが、この子らは強制的な背景(授業の開始や親御さんのお迎えなど)がない限り、どういうわけか必ず傍にいるのである。
 しかも、その2人はその教室の中で双璧を為すトップクラスの「いい子」だったりするから、他の講師や塾長からみれば、謎だ。「おまえはクセが強すぎるから、タイプが合えば最高なんだけど」とは塾長の解釈。
 確かに、その子ら2人は良い子だ。実際喋る内容や話し方も、聡い感じがする。
          ◇◇◇
 1人はもう卒業なのだが、もう1人は今年が本番である。
 そこで思った。
 どうやら私は――、その子の人生物語におけるキィパーソンなのかもしれない。