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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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心の港

 先日駅を歩いていて、かつて同僚だった女子大生の子に出会った。
 彼女とは、土曜ランチ営業の数少ない戦力同士だった。
 行楽地の週末だけに必ず忙しい。当時、メンバーの団結は強かった。
 厨房の中央で叫びながら暴走するぼくに、よく合わせてくれた記憶は古くない。
 それだけに、かけがえのない戦友だったのだ。にもかかわらず、
「こんにちは。………、」
 すれ違いざまにそう言っただけだった――。
 ただ、気にかかったのは。
 存在を確認してから完全に通り過ぎるまで、互いに顔を見ていたこと。
 「こんにちは」の後、彼女が何か言葉を継ぐような気がしたから。
 いや。
 きっと、思ったことはお互いさまだったのだ。
 ぼくもまた何か声をかけるって感じの顔をしていたのかもしれない。何か話をするのに歩を止めてくれることを、少し期待していたのだろう。お互いさま。
 しかし。
 ぼくも彼女も、歩みを緩めることもなく、立ち止まることはなかった。
 通り過ぎたとき、振り返りたかったな。
 だけど、ぼくは敢えて振り返らなかった。
 かつてのように、彼女の前で格好つけたり笑わせたりおどけたりなどのアクションを、ぼくはもう出来ないことがわかっていたから。
 その子がまだ土曜日にいたから、そこでの立場が悪くなってもすぐに辞めずに出勤していた時期があったくらい好感を持っていたのに、辞めてからずっと顔を見せてもいない。もう少し余裕を持っていたら、近況を語るとかできただろうに。
 そんなぼくだったから。
 今度、まだ彼女が勤めている仕事場に手土産でも提げて、「偶然」通りかかってやろうと心に決めて束の間の笑みを噛み殺す。
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