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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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一つの冴えた答え

 今日も行きつけの喫茶店に赴く。もうこのお店のスタッフで知らぬ顔はないし、折が合えば、お喋りすることもある。いつも通りテーブルにノートとルーズリーフとメモ帳を広げて執筆活動で顔を伏せていても、飛び交う声で店にいるのが「あの人だ」と正確に当てられるほど。
 しかし、顔馴染み中の顔馴染みなのに、名前も知らないのだ。
 もう5年にもなる付き合いなのに、一人の名前も知らなかった。
 毎年変わるスタッフや常連客の顔ぶれの中で、まったく変わらない私ならではの、不自然さだ。数年の間、毎日のように顔を合わせているのに、名前を知らないのだから。
 そう思ったものの、突然名乗るのも不自然だし、機会があるのなら、当の昔に名乗っている。
 そこで考えた。カードや特殊な商品を購入する機会ならば、名前を書くこともあるわけで、その時を狙ったがうまくいかない。と言うか、相手の名前を伺う口実にはならない。私の気まぐれかもしれない物思いの結果で、名乗るだけ名乗る。自己満足みたいで一方的で、どうにもそれでは感じが悪い。つくづくワガママな、私。
 そんな悩みをずっと、頭の片隅に持って過ごしていた。
 接客業の店員とお客さま。
 軽食を出す程度の人種によってはまず入らないカフェだ。数年の付き合いなんて予想されたものではないものだし、これもまた仕方のないことなんだ。
諦めのように決論付けて、そのまま毎日通っていたら。
 ある時、スタッフの女の子からメモ書きのようなお手紙をいただいた。
 よくあるとは言えない展開だけに少し驚いたが、そこには彼女のお名前と、自分は大学4年生で来月3月にこのお店から退職する旨が記されていた。
 ――なんだ。
 とてもよく悩んだもののどうしようもなかったのに、実は答えはシンプルなものだったのかもしれない。
 そんな何気ない女の子の行動に感銘を受けたので、席に着いた私は、すぐにメッセージカードを取り出した。このまま一方的に驚かされたままでは、エンターテイナー志望がすたってしまう。
 そう思うことにして、返事をしたためたのである。
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