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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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「空気/コーヒーカップ/最高の罠/(ホラー)」

 かちゃん、と音がした。
 僕は飲もうとしたコーヒーカップを、ソーサーに戻した。
 その写真を見て、驚いた。
「驚いただろ?」
 僕の狼狽ぶりに、煙草を灰皿のふちに置いて、伊良部は満足そうに笑った。
 写真の中で、伊良部と女の子が、躯を密着させて肩を組んでいる。
 かわいい感じの娘だったが、その目を見ていると、妙な胸騒ぎを覚えた。
 いや。僕もその女の子に一目惚れをしたのかも知れないと、そのときは思っていた。
 伊良部が写真を忘れていったので、僕はそれを財布にしまい、預かることになった。
            ◇
 伊良部は毎度、自慢気に交際の進展を報告してきた。
 いつも通り、駅前の美人喫茶での面会である。僕は投げ遣りな相槌を打ちつつ、視線をウェイトレスに向けていた。ウェイトレスは確かにキレイな娘が多いものの、彼女らもどこか投げ遣りな雰囲気がして、居たたまれない気分になってくる。
 この店を気に入る伊良部は、まったく空気を読まないらしい。
「いつも、『あなたは運命の人です』って迎えてくるんだぜ」
 さっきから、お医者さんごっこにはじまり、人形遊びだの、コスプレさせてヤッただの、やりたい放題らしい。
「貞淑な女ってのはあるけど、あの娘はいっちまえば、白痴だな。金持ちで世間知らずのお嬢サマ。ぼけっとしていて、なんでも『はい』ってふわふわ聞いちゃうタイプ。ヒキコモリで外出なんか滅多にしないし、どこか頭の回路が切れてるに違いないぜ」
「よしなよ。なんかデキ過ぎな感じがして、気味が悪くない?」
「気味が悪いと言えば。あいつ、氷浮かべた水風呂に浸かってたな。骨まで感じるとかいって」
 伊良部の話によると、特異体質なのだそうだ。
 それでも伊良部は、思い通りになるカノジョに、夢中になってしまっているようだった。
 レジで財布から千円札を出そうとしたときだった。
 伊良部からもらった写真が入っていることを、そのときまで忘れていた。誤って出した写真を見ずにしまおうとしたときに、お釣りが返された。写真を手にしたまま釣り銭を受け取る。小銭を小銭入れにしまって、写真を財布に戻そうとして――見た。
 伊良部が女の子と肩を組んでいる、写真。
「あれ?」
 写真の雰囲気が、前に見たときと違う気がした。
 全体的に茶ばんでいた。写真はこんなに早く劣化するものだろうか。
「おい、早く来い。おいてくぞー」
 伊良部に呼ばれて、慌てて写真をしまい気のせいだと思うことにした僕は、また写真の存在を忘れることになる。
            ◇
「家庭に恵まれなかったんだな。さみしくて仕方が無いんだろ。心の隙間につけ込みやすい。ホスト遊びを覚えたら破滅するタイプだよ。風俗嬢とかAV女優にいそうな、薄幸女だよ」
 伊良部は少し太ったようだ。奇を衒ったような服装だが、金がかかっていることをうかがわせる。どうやら、金回りが良いらしい。気取っているのだろうが、軽薄さがよく表れている気がした。
 僕たちは大学の4回生になっていた。僕は就職先が決まっていたが、伊良部は内定をとるつもりがなかったようだ。
「のめり込んでるって? オレが? 違う、あの女がオレ無しでは生きていけなくなってきたのさ」
 伊良部はほくほくした様子だった。
「肉体関係を持っただろ? その直後、オレはどうしたと思う?」
 伊良部は得意そうに、とんでもないことを言った。
「カネを借りてやったんだよ、百万くらい」
 そのときの伊良部を、僕はどんな目で見ていただろう。強烈な軽蔑が顔に浮いた気がして、伊良部を怒らせないか、どぎまぎした。
「相手に恩を着せてやったって、女が思えればいいのさ。これであの女はもっとオレに執着するようになる。地獄の入り口、最高の罠さ――」
「お金を返して、さっさと別れた方がいいよ」
「なにをいうか。オレにはヒモの才能があるんだぜ? 散々ふんだくって、そのカネを元手にして面白おかしい渡世をするさ」
 レジでの支払いのときに、また写真が出てきた。
 古ぼけた写真の娘はやつれており、眼が落ち窪んで頬骨が浮いていた。
 こんな娘だっただろうか。そう思うと、そんな娘だったような気もした。不憫な娘だ。
            ◇
 その後、伊良部と連絡をとることが無くなった。僕が大学を卒業したからだ。
 4月から都内の会社で働くため、引っ越しの準備をしていたときのことだった。
 開け放たれた窓辺の机を整理していると、古いボロボロの写真が出てきた。
 その写真を見て、ギョッとした。
 女が、白骨化していた。
 伊良部が骸骨と肩を組んでいる写真だった。
 そのときだった。
 僕の携帯機器に着信が入った。突然の着信音に、僕は驚いて跳び上がってしまった。それで写真が手を離れ、窓の外へ飛んでいってしまった。
 携帯機器を手に取る。着信は、高校のときのクラスメイトだった。
「ひさしぶりだね」
「おう、しばらく。ところで、大変なんだ」
 伊良部が、死んだ。
 カノジョとの旅行中に、交通事故に遭ったらしい。
 僕は寒々としたものを感じながら、伊良部の葬式の案内を聞いていた。
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「部屋/虫アミ/燃える記憶/(アクション)」

 舞踏会の会場の硝子窓をぶち破って、カイコは城外へと身を躍らせた。無数の硝子の破片とともに落ちる先には、予定通り、天井をはずされて座席が剥き出しになった車が停まっていた。
「失敗した! 手筈通りに脱出する! ヒアリー、出して!」
 クッションを厚くした後部座席に墜落すると、カイコは運転手に叫んだ。ヒアリーと呼ばれた運転手は無言でアクセルを吹かす。けたたましい、エンジンの音。
 車が急発進する。カイコが背もたれに吸いつけられる。風が顔面を叩く。
「撃ち落とせたの、王冠だけだったよ」
 後部座席から後ろを見つめながら、顛末を手短に報告する。
「だから、飛び道具をアテにするなと普段から申していたのに。だいたいきみの、」
「説教はあとにして!」
 カイコが短く叫んで素早く伏せたその瞬間、フロントガラスに蜘蛛の巣状の罅が入った。
車の走行が一時、蛇行する。すかさずカイコたちの走る車のすぐ横の石畳に、砲弾が飛んできて砕けて石つぶてが飛び散る。カイコは目を凝らして追っ手を見る。
「ヤバい! ハシリトカゲだ!」
 馬くらいの大きさにしかならないドラゴンに騎乗した銃口が放つ火花を確認できて、カイコは唇を噛む。武器になるものを探す。見つからない。
「あたしのダーツの箱、どこにある?!」
 後部座席の足元は、虫アミやら傘やら絵本やらのガラクタでいつも埋め尽くされている。
「あんな貴重品、おまえの部屋に置いてきた」
「はあぁッ?!」
 すぐ後ろに2頭が、迫ってくる。
「そこに絵本がある。追いついてきた方に、その中身を見せて差し上げろ」
「絵本なんか見せつけてどうするのッ!」
 更に2頭が、右側に並走し始めていた。
「いいからやれ」
「ああもうッ! バッカみたい!!」
 カイコが辛うじて絵本を手に取る。ちょうど右横に張り付こうとしてきた銃士と目が合い、投げやりな気持ちで絵本を広げようとしたまさにそのときだ。
 きるるるるるるる!
 車が大きくハンドルを切った。遠心力にカイコは引っ繰り返り、左サイドに頭を打った。
「ってーなぁ! ロデオやるんなら1声かけろよッ! ぶっ殺すぞッ!!」
「肉迫しているだろ。避けようとするのは人情だ」
「こんなときに人並みの感情を発揮するんじゃねぇ!」
 すぐ隣に並んできた銃士が悠々と狙いを定めようとしているのに気づき、カイコは脂汗が滲んだ。噛みつくように睨みつけて奥歯を噛みしめる。
「僕の専門を知っているか」
「あん?!」
「僕の専門は、膨張を使うテジナだ」
 思い立ったカイコは絵本を手にとって、それを並走する銃士に向けて広げた。
 ずばーん。
 開いた絵本の中から、丸太ほどもあるものが飛び出して、トカゲをぶっ飛ばした。
絵本から飛び出したのは、ボクシングのグローヴをはめたマッチョで巨大な腕だった。並走していたトカゲ2体をパンチで一掃する。
「なにコレ!」
 絵本を閉じると腕は引っ込み、そしてまた開けると、巨大なパンチが再び飛び出して、後続の2頭もぶっ飛ばす。そこで絵本は台紙がくちゃくちゃになり、使えなくなった。
「絵本、壊れたけど!」
「飛び出す絵本は愉快だったが、こりゃ改良の余地があるな」
 ぶっ飛ばされて転倒するトカゲに、追いついてきたトカゲが巻き込まれて、次々と引っ繰り返ってパニックになっていた。
 しかし、転がる仲間を跳び越えて、追いすがってくる者は少なくなかった。追いつかれるのも時間の問題だ。
 それでも、脱出ルートの南側の城門はもう目の前だった。予定では門は開け放たれているハズだ。城から出れば、残る追っ手は待機している仲間に任せられる。
 ところが。
「ちょっとぉ! 門開いてないじゃん!」
「開いてないな」
「ワイロ渡してあるんじゃなかったの?!」
「追手ナウだったら、契約外なんだろ」
 みるみるうちに閉ざされた扉が近づいてくる。後ろには、トカゲ騎兵が迫る。
「カイコ、停車する前に助手席に移れ。シートベルトを閉めるのを忘れずに」
「何かプランがあるの?」
「僕の専門は、膨張を使うテジナさ」
 ヒアリーは肩を竦めて運転席の右下のレヴァーを引くと、車のトランクの蓋が開いた。その直後、ドスドスッと鋭い音が上がった。銃弾が蓋に無数の凸凹をつくる。
 その間に、カイコは助手席に移った。カイコがシートベルトをセットしたことを確認すると、ヒアリーは速度を緩めながら、座席の真下の2つ並んでいるボタンを同時に押した。
 その途端、車がなにかを吹き出すような大きな音を立てて、車体がベコッと風船のように丸く膨れ上がったかと思えば、次の瞬間には「ボンッ!!」と爆発音がして、助手席と運転席が上空めがけて吹っ飛んでいく。
「どうやって着地するの?!」
「着地ポイントには緩衝用ネットを張っておいたから大丈夫だ! ただし、」
「ただし?!」
「僕の計算が正しければ、という注釈がつくが!」
「あんた、昨日お釣り間違えてなかった?!」
「ふっふっふ、また1ページ、燃える記憶が追加される!」
 2人をしばりつけた座席は放物線を描いて、30ヤードはあろうかという城壁を軽々と飛び越えて、城外にひろがる森の中へと落ちていった。

 17歳のエロチカ ③

 ルリはきつく目を閉じて、成宮の胸にしがみついていた。消火栓のランプのせいで本当のところは解らなかったが、ルリは顔を紅潮させているに違いない。
 成宮は、ルリから感じられるにおいが、変わったことに気づいた。
 幽かだったが、甘酸っぱい感じの香りが、まるであまい油のような馴染みを憶える匂いに変化して、ルリから漂っていた。
 ――この娘の“女”の匂いか。
 しばらく抱き合ったまま、2人はじっとしていた。体温と鼓動を共有し、躯の芯からじわじわとしたものがせり上がってくる気配に、感じ入っていた。
 たまらず成宮は突き上げる要領で腰を動かした。スカートの前面がまくれて、肌と肌を隔てる布が1枚だけ薄くなった。2人は衣服越しで揉み合った。顔を背けてしがみついているルリの吐息が熱っぽさを増し、荒くなってきた。
 ルリの下着と成宮のスラックスの布地がこすれる音は乾いていたが、いつしか秘めやかなものとなっていった。
 成宮は両腕を伸ばし、ルリの尻をつかんだ。「はあぁっ」と、ルリから狂おしい声が上がった。尻をつかんだことで固定し、密着部分を抉るように、押し付けてこすりつける。
 成宮は、我を忘れかけていた。
 顔を胸に押し付けていたルリが、切迫した表情で成宮を見つめた。
 そこで、成宮は我に返った。ルリの表情に、不安や戸惑いのようなものを感じた。
 それでも、腕の中の少女はもう、為されるがままだった。このまま我を忘れて腰の動きを激しくし続ければ、すばらしい炸裂と、その後に最高の解放感がもたらされることを、彼は当然知っていた。
 しかし、意志に反して、身体の動きは徐々に緩やかにしていった。そして、止まった。ルリが目を大きく開いた。潤む目から、一筋の涙がこぼれた。「なぜ?」と訴えかけるような眼差しだった。成宮はルリの頭をやさしく撫でた。
「――よく、がんばったね」
 ルリは喉を鳴らしたようだったが、狐につままれたような表情をしながらも、おとなしく成宮に従った。
 表情には出なかったが、ルリは胸を撫で下ろすような気持ちが強かった。成宮の言葉に、隠した彼の本心を感じないわけではなかったが、気持ちが伝わったような気がして、うれしかったのだ。
 ききわけの良さにさりげなく感謝する成宮は、ルリの制服の乱れと自分の身なりを直すと、わざとらしい咳払いをしてから、はにかむ彼女の手を引いて、店の中へと踏み込んでいった。

 17歳のエロチカ ②

 突如、ルリのくちびるが離れた。ルリは脚の力が抜けてしまった。
 しかし、床にへたり込むのは免れた。成宮が咄嗟に前のめりになって、ルリを抱き留めていた。
 ルリは震えていた。成宮は抱き留めた姿勢のまま、ルリの耳元に顔を寄せて囁いた。
「イイ女になりたいんだろ。頑張んな。ほら、」
 ルリを立たせ、顔を耳元から離すと、ルリが哀れっぽい表情で見上げていた。瞳は涙で潤んでいたが、なんとか微笑んで見せてきた。それから、挑むような表情をして、ルリが躯を寄せてきた。成宮は背中を消化栓にあずけた。そのままルリを抱きとめる。再び躯が密着した。消火栓のランプに照らされたルリの顔は暗がりの中で赤く浮かび上がって、女の妖魔のようだった。
 ルリがおずおずと、下半身を動かしていた。成宮の左太腿に腰を押し付けていた。成宮は右脚をルリの股に、割り込ませた。途端に、「ひ!」とルリの短い悲鳴が漏れた。腰と腰が正面から重なった。
 しかし、ルリはそのまま腰で、成宮の下腹部をひかえめに探っていた。制服のスカートとスラックスの布地がこすれて、わずかに乾いた音を立てていた。
 ――あたってる。けっこう、硬いね……。
 成宮はルリの動きに合わせて、スラックスの下で硬直している自らの器官を、ルリのピンポイントにあてがおうと、ゆっくりと腰を動かせる。
 やがて、ルリの下腹と成宮の或る部分が、こすれ合った。動きがピタリと止まる。
「あふっ」
 勘所を突き付けられて反射的に、ルリは身をよじって逃げようとした。
 成宮は適度な力でルリを捕まえていた。強引に振り切れば逃げられる程度の力だった。
 ルリは、逃げられなかった。その躯から力が抜けていくのが、わかった。
 成宮はルリを正面に抱き直して、再びルリの奥まったところにあるスイッチに、自らの腰を押し付けた。今度は、ルリは逃げなかった。
 深呼吸をしながら肩の力を徐々に抜くルリは、男性の切実さのようなものを、感じ取っていた。抱きしめられた腕の力は強くなかったが、突き放すのを躊躇わせるような、なにかがあった。温かくて、熱かった。
 一方で、下腹に硬いものをあてがわれていることが示している行為への、不安も感じていた。その求めに自分の意思で断り切れずに、なすがままになってしまうのはいやだったが、自分では断ることが出来そうになかった。
 ――どうしよう。どうしたらいいのか、わからない。でも、まだ、そこまでは……。
 さっきから心臓はずっと、かつてないほどの速さで脈を刻んでいる。涙が、滲む。
 けれども、自分の肌は相手を知ろうとしていて敏感になっていた。奇妙な心地のよさに、気が遠くなりそうでもあった。
 抱きしめられて、押し付けられて、ルリは、なにかが溢れて滲み出す気配を感じていた。

 17歳のエロチカ ①

 そこは、地下のライブハウスだった。前々からルリは興味を持っていたものの、こうした店の知識の無い女子高生では、立ち入ることが出来なかった。ルリは成宮の左腕に、躯を密着させながら、赤煉瓦の階段を下りていった。
 階段の先には、スポットライトに照らされた、頑丈そうな扉があった。
 防音のためなのだろう。中で轟く大音響によって、扉は微かに振動していた。
 扉の前に来ると、ルリは成宮を見上げた。
 スポットライトのせいか、成宮を見つめるルリの瞳は、キラキラと輝いていた。
 下りきった階段の脇には、2畳ほどのスペースがあった。そこは暗がりになっていたが、壁面に取り付けられた消化栓のランプが、赤くぼんやりとしていた。成宮はルリの手を引っ張った。
 成宮は落とし込むようにして、ルリにくちづけをした。軽いキスはやがてくちびるを押し付けて、その感触を確かめるようなものになっていた。それから、ルリの口に自らの舌を滑り込ませ、ルリの舌と絡ませた。ルリの背中に両腕を回し、躯を寄せた。
ルリは目を閉じて、成宮にくちびるをあずけていた。経験が無かった。だから相手に任せた。くちづけの感触に浸っていた。
「!」
 思わず漏れた声は、くぐもっていた。
自分の口に、舌が入ってきた。驚いて目を開けた。すぐに目を閉じた。自分の舌をチャクチャクといじめられるのが、気持ちよかった。
 抱き込まれるように、躯を寄せられた。鼓動が高まっていた。息が苦しくなってきた。成宮の胸と自分の胸が密着し、ルリの控えめなふくらみが、押しつぶされていた。激しくなってきた心臓の動きが成宮の胸に伝わっているようで、気恥ずかしくなった。膝が不自然に笑い、脚はがたがたと落ち着きを失くしていた。
 成宮は、ルリの胸に硬く尖っているものを、ワイシャツ越しに感じとっていた。