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ローリン・ダイニング!!

Rowlin’Dining! すべての作品は、新作の材料だ!
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 続、さまよえる魂

 羽化をし損ねた蝶は、そのあとどうなったかって?
 根性のあるやつは、誰もが歩くことのなくなった荒れ果てた地上を、自らの脚で踏みしめて、血を流しても進んでいったよ。もし、今生きていれば、オオムカデのようになっているかも知れないね。
「どうしようもない中でも、強くなれるんだ?」
「でも所詮は、ちっぽけな虫さ。そのうち自らの毒で行き倒れるか、他の生き物のエサになるかだろう」
            ◇
 自分を磨いて、目指す先にある栄光。
 そのうちの1つは、幸福な人間関係の構築である。
 そのときは、わたしの胸の中にいた子供も、泣きやんでくれるだろうか。
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 さまよえる魂

 新しい表現のために、あらゆる苦しみを体験したという人を見た。
「幸福な俺とか俺の幸福は考えたこともないし、想像できない」
「自由を得るために、自殺するような気持ちをもってドロップアウターとなった」
 でも、そうしたことを能動的に選択したからといって、プラスにはなりません。
 知ったかぶりよりは、マシかも知れませんが。
            ◇
 地上を這うことしかできないジャイアント・センチピードは、天を駆けるコンゴウインコに憧れるだろう。しかし、コンゴウインコはセンチピードに憧れることは無い。どちらも派手で、珍しい生き物ではあるのだが。
            ◇
 現代の身分差、叶わぬ恋。
 手も足も、口でさえも、出せなかった。
 僕はこの人を、楽しませたり喜ばせたりできないけれど。
 それでも、僕のわかるところにいたときには、わらいかけていてほしかった。

a Resuscitated Hope ⑤

 見世物小屋のオヤジが、物語っています。
「お葬式をしてね、翌朝、屠畜場に運ぶことになってたんだけど、朝になったら、ドラゴンはいなくなってたんだ」
「え? どうして? 誰かが死体を盗んでいったのかな」
「どうかな。オイラ思うんだけど、ドラゴンはやっぱりドラゴンだったんじゃないかな」
「どういうことです?」
「人の前で死にざまを晒さない、といわれているだろ」
「ネコとおんなじじゃん」
「ただ、夜中に通りがかった旅人が、そのドラゴンを見たらしいね」
「……動いてたの? てゆーか、街灯も無いのに見えたのかさ」
「見えたんだと。その夜は満月でな、大きな獣の死体だと思ったそうだ。ただ、その目は月を見つめていたらしい。食い入るような目で、じぃっとな」
「ああ、太陽が好きだった。最期は、月を太陽だと思って見つめていた」
「どうかな。太陽はヤツを近づけさせなかったわりに、ヤツに大きなヒントを与えたんだと思うよ」
「どういうことです?」
「このドラゴンは、お人好しで真面目で、その果てに人間たちにその命運を握られてしまうことになっていただろう」
「悪気は無かったのかも知れないけど、」
「最後の最後で、ドラゴンは奪われた自らの尊厳を取り戻したんだと、おれは思うよ。自分の人生の主権を失うと、碌な目に遭わねぇ。精々気をつけなくちゃあなぁ」
 オヤジは見世物の入った檻を親指で指して、仰っていました。

a Resuscitated Hope ④

 すっかり衰弱しきってしまったドラゴンは、もう労働力としてもエネルギー資源としても、使えなくなっていたのです。もう苦しむだけの力もなく、横たわったまま動けないドラゴンをかわいそうに思った人々は、或る夜に僧侶を呼び、ドラゴンを弔うことにしたのです。
(なぜって、そりゃあ、苦しみを短くするためだろう。安楽死ってヤツよ)
 やがて祝詞の詠唱と祈りが終わると、ドラゴンは眼帯などの重たい拘束具ははずされ、その肉体は町の人数十名によって、車に乗せられました。人間たちは自分たちの万一のために、ドラゴンの心臓を長い杭で貫いておきました。もう痛覚はなかったらしく、叫び声は上がらず、眼帯をはずされた目は、再び太陽を見つめることはなく、閉じられたままでした。
 さて。
 車の向かう先は、墓場ではなく、屠畜場です。
 人間たちは、ドラゴンの鱗や骨や肉や臓物にも、価値を見出していたのです。

a Resuscitated Hope ③

 そうしているうちに、ドラゴンは自分の視力が落ちてきたことに気がつきました。
(視野が狭くなったってコトだろーなぁ)
 これでは働くことどころか、勉強することもままなりません。
 人間たちは、目の治療といってドラゴンの目に強固な眼帯をつけました。眼帯をしているときは彼の目の代わりをすると、人間たちは約束してくれました。
 こうして。
 真面目なドラゴンは日に日に弱り、遂には自分の脚で立ち上がれなくなってしまいました。「働かざる者、食うべからず」ということで、ドラゴンは嘆きました。
 しかし、人間たちは「動かなくても働ける」といって、ドラゴンを縛り上げました。
 縛り上げたドラゴンを、人間たちは火にくべました。
 すると、良質の燃料が取れました。ドラゴンの脂でしょうか。
 ドラゴンは苦しみましたが、
「自分がすこしだけ犠牲を払うだけで、これほどの人間が喜ぶのなら、それも悪くない」
と思って、働けない代わりに黙ってじっとしていました。